house-at-shimogamo

下鴨の家

京都市左京区 2006.05
協力/施工 施工:熊倉工務店・末松工務店共同企業体
構造:山辺構造設計事務所
設備:空間設備コンサルタント
規模 鉄筋コンクリート造 地下1階、地上2階
敷地面積:367.14㎡
建築面積:183.50㎡
延床面積:461.95㎡
受賞 2007年 第6回エコビルド賞
2011年 シカゴ・アテネウム・建築とデザインミュージアム 2011グリーン・グッドデザイン賞
掲載 2007.4住宅特集
2007.9モダンリビング173号
2008.1月刊ハウジング
2007.11どりーむNo.458
和福美2008年冬号
2008.12和楽
House & Materials Elements on Architecture、Japan Living

「各室から緑が見えるように」というものが建主の唯一の要望でした。鈴木が訴求したのは、「京都の現代の景観」をつくっていくこと。伝統的な町家や寺社建築と調和しながらの新しい京都の景観のありようは、京都を愛し、足しげく通う鈴木が日頃から心にかけていたことでした。場所は市内でも指折りの閑静な住宅街にある2面ぎりぎりに隣家が近接している110坪の角地。 住み手にはできるだけ広く外界につながる空間を感じてもらえるよう、長年訴求している「インターフェース」を採用、建主の要望「緑が見える」をも併せ実現しました。
敷地いっぱいを使って住空間を確保、外観はフロストガラスで、夜間は内部の照明が、行燈のように街のなかをやさしく照らします。日本では「借景」という概念が暮らしの知恵として成立してきました。残念ながら最近では借景立地に恵まれないことが多いです。どんな立地であろうとも快適な住環境を確保する、これがESAの絶対方針です。外界の必ずしも好ましくない景観から視覚を特別な世界=小宇宙に向けることを実現しようとしたのが、ESAが提唱し続けるインターフェースです。家屋の外側に、外が見えるようで見えない、見えないようで感じられるスクリーンを設け、 その内側にグリーンを配置させる手法が「インターフェース」の基本形です。
日本の伝統「縁側」が、外であり内という、世界には例がない(バルコニーやテラスとは似て非なるもの)まさしく中間領域=インターフェースであるという鈴木の視点は、和と洋の生活様式を実体験してきたところから出てきたものです。日本社会の良い意味での曖昧性、人と人、人と自然、人と社会との絶妙な距離の取り方を体現しているものでもあります。インターフェースはそんな縁側同様、外と内の境界域を和らげるルーブリケーター(潤滑油)であり、同時にフィルター、バッファーゾーン、クッションでもあるのです。
そんなインターフェースのスクリーンをこの家では2つの種類を考えました。ひとつは敷地を囲む大きな円形のフロストガラス、主に2階の北東面を、現代の障子として柔らかい光を入れながらプライバシーを完全に確保しています。そしてもうひとつは燻煙割竹の縦格子。この割竹スクリーンは隣接する日本家屋の風情を感じさせながらプライバシーは保つことができています。お互いを思いやる隣人関係は、気配を感じさせながらプライバシーを保つことで成立するというのが鈴木の持論です。スクリーンの内側には矮性孟宗竹をおもに、京都の景観に調和する和庭園に使われるリュウノヒゲ、トクサを低層部に配しました。また、日本の伝統的デザイン・ボキャブラリー「縁側」、「格子(スクリーン)」、「坪庭」、「庇(ルーバー)」、「月見台」、「東屋」、等を、素材としては竹(スクリーン、床、建具、家具)、石(内外の床、壁)、漆喰、和紙をふんだんに採用し、モダンであり硬質ながらソフトな印象のフロストガラスを現代の障子として採用しました。
閑静な下鴨にふさわしく、家の中の光がそのまま夜道を照らす大きな「行灯の家」として周辺住民に親しまれ、愛される家になることを願っています。

VIEW MORE WORKS
CONTACT お問い合わせ